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エストニアの介護・福祉制度
公開 最終更新
エストニアは2024年時点で人口136万人、 そのうち65歳以上が21.3%、75歳以上が10.0%を占めます。
三段の階段と、連帯という考え方
エストニアの医療は三つの段に分かれている。 一段目が家庭医(家庭医と家庭看護師)、二段目が専門医、 三段目が看護ケア(nursing care)。 健康問題があるとき、人はまず一段目に足を掛ける。 家庭医のところでは相談と必要な検査と治療が受けられ、 足りなければ家庭医が次の段へ送る。 急な病気やけがや中毒のときだけ、この階段を飛ばして 病院の救急部門へ行くか救急車を呼ぶ。 費用を持っているのは健康保険基金(Tervisekassa)で、 120万人分の医療費を受け持っている。 基金は家庭医、歯科医、病院といった医療提供者と契約を結び、 健康保険料から集めた金で一次医療、専門医療、看護ケア、 子どもの歯科診療の代金を払う。薬と医療機器の購入にも金を出し、 現金の給付も出している。 基金が掲げている原則は二つある。一つは連帯。 いま働いている被保険者が、いま働いていない人の医療費を負う。 子どもと学生と年金生活者の医療費は、働いている人が全部持つ。 働いている人どうしのあいだでも、保険への拠出は 本人の健康リスクではなく所得で決まり、 給付は拠出の大きさにかかわらず等しく受けられる。 もう一つは平等な扱いで、被保険者と提携先を法令に沿って 同じ権利で扱う。
六十三歳という区切り
エストニアの制度には、63歳という線が何度も出てくる。 医療提供者は、基金が代金を払う医療サービスについて 別に受診料を取ることができる。健康保険法がその上限を定めていて、 専門医(歯科医を含む)、理学療法士、臨床心理士、言語聴覚士への 受診と救急部門の受診は20ユーロが上限になる。 ただし次の人にとっては上限が5ユーロに下がる。 19歳未満、妊娠している人(妊娠や出産に関わる外来治療の場合を除く)、 1歳未満の子の母、63歳を超えた人、国家年金保険法による 老齢年金か労働不能年金を受けている人、労働能力手当法により 労働能力が一部または全く無いと判定された人、 労働市場措置法にいう失業者、社会福祉法による生計扶助を 受けている人とその家族。 歯科の給付も同じ線で引かれている。健康保険のある成人、 労働能力を一部または全部失った人、健康保険のある63歳を超えた人、 妊娠している人、1歳未満の子の母、歯科の必要が高い人、 失業保険基金に失業者として登録した人、 直近2か月に生計扶助を受けた人が受けられる。 義歯の給付はさらに絞られていて、63歳を超えた被保険者、 労働能力を一部または全部失った人、老齢年金か 労働不能年金を受けている人が対象になる。
自己負担の上限と、無料のもの
受診料と入院料には、2025年4月1日からの上限が示されている。 家庭医への受診は無料。医師の往診は家庭医のものを含めて5ユーロまでで、 一回の往診で何人を診ても5ユーロを超えて取ることはできない。 医師が妊娠を確かめた妊婦と2歳未満の子には、往診の料金は掛からない。 これらを取るかどうかは医療提供者の権利であって義務ではないので、 より低い額にすることもできる。 無料と決まっているものもある。労働不能証明書の発行と、 処方箋の発行には料金を取れない。 診断書などの書類の発行には妥当な額を取ってよいが、 健康保険基金、警察、裁判所、ほかの医療提供者が求めた書類、 労働不能の審査、労働能力の評価、障害の重さの判定に要る書類には 料金を掛けられない。国防に関わる徴集対象者の証明書についても、 家庭医は本人から取らず、居住地の国防部門に請求する。 カルテの写しを求めるときは、21頁目から1頁につき19セントまで。 料金を受け取った医療提供者は、受け取ったことを示す書類を 患者に渡さなければならない。
医療機器のカードと、薬の追加給付
医療機器は、基金が持っている一覧に載っているものだけが償還の対象になる。 償還の率は参照価格の90パーセントか50パーセントで、 患者はそれぞれ参照価格の10パーセントか50パーセントを払い、 参照価格を超えた分も自分で負担する。 一覧は毎年、製造者と職能団体の提案、それに製造者との価格の取り決めをもとに 入れ替えられる。 必要かどうかを決めるのは主治医で、一覧に載った機器を要する病気と 診断され、償還の条件に合っていれば、主治医がデジタルの医療機器カードを 発行する。紙のカードは無い。 カードが出たあとは薬局へ行くか販売者に直に連絡して、 身分証を見せれば割り引かれた値段で買える。 他人のために買うときは、その人の個人識別番号を伝える。 本人の身分証を持っていく必要は無い。 載っているのは、糖尿病の人の血糖の測定と補正に使う品 (血糖測定紙、ランセット、インスリン用の針)、 ストーマのケア用品、装具、膀胱カテーテル、創傷被覆材、 睡眠時無呼吸の人の持続陽圧呼吸(CPAP)装置とマスク、 リンパ浮腫や静脈不全や潰瘍の治療に使う圧迫用品など。 19歳未満の子にはインスリンポンプと持続血糖測定の一式も加わる。 薬の側には追加給付がある。償還対象の処方で買った薬に 暦年で100ユーロ以上を払った被保険者が、条件に合えば受けられる。 このほか一時的労働不能給付があり、 病気の子や家族を看護する被保険者には看護手当が出る。
- 受診料と自己負担/エストニア健康保険基金(Tervisekassa)(英語)
- 健康保険基金が出している給付/エストニア健康保険基金(Tervisekassa)(英語)
- 医療サービスの三つの段/エストニア健康保険基金(Tervisekassa)(英語)
- 医療機器の償還/エストニア健康保険基金(Tervisekassa)(英語)
- 基金について/エストニア健康保険基金(Tervisekassa)(英語)
この国の人口と寿命
日本と比べる
| 項目 | エストニア | 日本 |
|---|---|---|
| 65歳以上の割合 | 21.3% | 29.8% |
| 75歳以上の割合 | 10.0% | 17.2% |
| 平均寿命 | 79.3歳 | 84.9歳 |
| 65歳時点の平均余命 | 19.2年 | 22.6年 |
日本は、介護にかかるお金を保険でまかなう国です。40歳になった月から全員が保険料を払い、65歳以上になると原因を問わず、40歳から64歳までは老化にともなう決められた病気にあたるときに使えます。運営しているのは市町村と特別区で、国ではありません。
使ったサービスの費用のうち、本人が払うのは原則1割です(所得が高い人は2割・3割)。残りは保険から出ます。介護そのものを現金で受け取るしくみは無く、給付されるのはサービスです。
日本の介護制度の解説は、姉妹サイト「介護の窓口」にあります。どちらも株式会社京谷商会が運営しています。
- 世界の介護制度と日本の違い/保険でまかなう国・税でまかなう国・自助を軸にする国の分かれ方
- 介護保険とは?/日本の介護保険のしくみ。誰が払い、誰が使えるか
- 介護保険の自己負担割合/1割・2割・3割の分かれ目と、上限のしくみ
ほかの国の介護・福祉制度
このページは国連加盟193か国ぶんあります。エストニアに近いところから並べました。「未」が付いている国は、まだその国の言葉の一次資料にあたれていないので、 制度の本文がありません。
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オセアニア14か国
北アメリカ2か国
- United Nations, World Population Prospects 2024(国連経済社会局人口部。中位推計)
- 介護保険法(平成九年法律第百二十三号)(デジタル庁 e-Gov 法令検索。第3条・第9条・第41条)